2026年2月

2

突然ですが、皆さんが思い浮かべるところの、ロッドをテストする人(テスター)とはどんな人ですか?
やっぱり釣りが上手な人ですか?
釣りが上手い人というのは往々にして道具を器用に扱える人、つまりフィジカル的に器用であり運動神経が発達していると言えます。

釣り以外のスポーツにおいても野球やテニス、スキー、スノーボード、サーフィンなど道具を使う種目では運動神経のなかでも器用に道具を扱えるように自分の体を慣らすセンスが必要になります。

釣りでいうところの道具とはロッドやリールにあたるのですが、前述のような器用に道具を使いこなすまでのスピードが速い運動センスの良い人というのは「弘法筆を選ばず」のことわざ通りどんな道具でもすぐに自分のものにすることが出来る、ロッドに例えるなら最初は「ちょっと使いにくいかも」と感じても、徐々に体が順応して来て「ん?そんなに悪くないかも」となり何時間か使った後には「なかなか良いじゃんコレ」となってしまって、体を道具に順応させる能力が優れているがゆえに最初の違和感が無かった事や「気のせい」になってしまう。
防止策としては、ロッドを使ってみた最初の違和感をすぐにメモしてロッドのプロトモデルもすぐに使用感をまとめたメモと一緒に返却することである程度防ぐことは出来るのですが...

こういう器用な釣り名人タイプは試作しているロッドをテストするよりも完成したロッドを使ってレビューしてもらう広告塔「インフルエンサー」や「モニター」に向いていると言えます。
人から注目を集める術を心得ていて、文章力があるとなお良いと思います。
あえて、社外の釣り名人タイプの人を開発に参画させようとするとメーカーのイメージカラーとは別の特色を盛り込みたいと言う意見が出がちで、これは自身のシグネチャーモデルにしたいという願望が現れるためであり...良い方向に進めばよいのですが悪目立ちしてしまうケースもありますのでブランドイメージを壊さないために気を付けたいところです。

逆に試作品のロッドをテストするのに向く人というのは、どちらかといえば不器用なタイプであり、最初の違和感が消えることなく持続する傾向にあり、違和感があるところを事細かに、出来ればどこの箇所を約何パーセント硬くとか、感覚的に感じたことを言葉や数値にして記すことが出来る、あくまで愚直に淡々と行える人が好ましく、裏方に徹して目立つ必要もありませんので、社外の人よりも社内にいる人材でテスターがいればそれに越したことはないと言えるでしょう。
欲を言えば、ある種の釣りに特に傾向している人間よりも、これまで様々な釣りを体験してきた人であれば答えを導き出すための引き出しも多く良い製品作りに貢献できるといえます。

※これらはあくまでメーカーによって考え方は様々ではありますので一概には申せません。

考えてみれば、ロッドを購入してくれるユーザー様がみんな器用な釣り名人であるわけもなく、器用な人も居ればそうでない人も居る中で優先すべきは、「器用でない人でも快適に扱いやすい」ロッドを作れる人というのは器用でない人がテストしたものとも言えますし、裏を返せば器用でない人も使いやすいロッドというのは器用な人ならもっと使いやすいと感じてくれるはずなのではないでしょうか。
また器用な人でないと使いこなせないような特殊なロッドになってしまった場合、長く支持されたロッドというのは歴史上ほとんどなかったと思います。

本州の河川がクローズしている冬場でも北海道の地で黙々とテストを繰り返す中で見えてくる改善点も多くあり、ガイド数や大きさ、ロッドの継数や素材の見直しなど、器用でない私には見直すべきところが一年を通してテストを繰り返すことで発見も多く、本州の冬季鱒釣り場にも還元可能な事項も少なくないと感じています。

余談ですがロッド以外ですと、ナイロンラインも低水温で硬くなりにくいしなやかさを売りにしたコールドウォーター用とかあっても良いのでは?と思ったりもします(フライラインではCOLD WATER用や、WARM WATER用が存在している)

この度も当コラムにお付き合いくださいましてありがとうございました。




前回に引き続き「釣り人の個性」について今回もお話しします。

同じジャンルである渓流トラウトのルアーフィッシングをたしなむ私達であっても一人一人個性というか癖みたいなものがあり、同じ道具であっても使い手が変わればそれぞれに違った道具になりうることもあります。


2回目の今日はキャスティングの癖について一緒に考えていきたいと思います。
ひとことにキャスティングと言っても、私達の主戦場である渓流域は木の枝や大岩といった様々な障害物をかわしつつ、ルアーをポイントに送り届けるために多彩なフォームでキャストをする必要に迫られます。

頭上に木の枝が繁茂するようなポイントではオーバーヘッドキャストはほとんど行わないと思うのですが、その代わりサイドキャスト、アップクウォーター、アンダークウォーター、バックハンド、フリップキャスト等があり、自分がよく行くフィールドのタイプや得意、不得意などの要因で多用するキャストバリエーションは個人差があると思います。

近年流行りの影響もありフリップキャストを好む方も多いようです。
フリップキャストについては指のリリースのタイミングを間違えなければ、フライになってしまったりすることもなく左右にズレることなく方向性を保ちやすいフォームですが、場所により飛距離を要する場面などは他のサイドキャストなどを行う必要があります。

オーバーヘッドやフリップキャストは基礎がしっかり出来れば癖は生じにくいフォームのため、今回は比較的癖が出やすい横方向にロッドを振るキャスティングについて更に踏み込んでいきたいと思います。

縦方向にロッドを振るキャストとは対照的に、横方向にロッドを振るキャストでは、フライになったりせずに低弾道でルアーをキャストしやすい反面、指のリリースのタイミング次第で横方向にズレが生じやすいという特性があり、いずれにしても慣れが必要という面では同じ事。

キャストにおける癖というのも長年培われてきたその人の釣りスタイルによることが大きく、私の場合を例にとってもルアーをキャストする釣りはバス釣りから始まり、シーバス、トラウトとたまにボートでやる以外は岸釣りメインでやってきたこともあり使える竿は1本で様々な種類、重さのルアーを1本の竿で扱わなくてはなりません。

使用するロッドもざっくりではありますが、長さやパワー、素材等々の違いで Comfortable weight(快適に使える推奨ルアーウェイト)はあるものの、時としてその範囲よりも軽いルアーや重いルアーを使うこともあり、また同じ重さであってもルアーの大きさ等の違いでキャスト時に受ける空気抵抗により投げやすく感じたりそうでなかったりと様々です。
前述の、オーバーヘッド、サイド、クウォーター、バックハンド、フリップキャスト等では基本、角度の違いこそあるもののロッドは扇型を描いてモーションしており、ロッドを振りかぶってルアーのウェイトが一番乗る瞬間(最も高負荷になるポイント)があり、軽量で小さいルアーのキャスト時にはティップの戻りが素早く投げにくかったり、重いルアーのキャスト時にはロッドが曲がり過ぎることでもたつきを感じるなど、ルアーが軽すぎても重すぎてもキャストし辛く感じます。

この急激に負荷がかかる状態を避け出来るだけ緩やかに一定の負荷を掛け続けてキャストするモーションになるには、扇型を描いて振るモーションではなく、ティアドロップ型を描いてロッドを振ることで軽く空気抵抗の少ないルアーから重くて空気抵抗の大きいルアーやメタルジグのような高比重ルアーまでをある程度カバーするために自然と身についていった「癖」によるキャスティングモーションであると言えます。

そのため、その人にとって合う、合わない、良し悪しというのは別の話であります。
このティアドロップ型を描く投げ方の癖は適当に「まわし投げ」と言っていましたが「サークルキャスト」という名前があることは後で知りました。
斜め上に振りかぶって斜め下からルアーを放出したり、干潟などでディープウェーディングしたままの状態からは上から横に回したりします。

急激か緩やかかは別にして、キャストの際にはロッドに少なからず負荷が掛かりますのでここからはブランクにかかる負荷についてざっくりとお話しします。
スピニングロッドもベイトロッドも、リールが着く面にガイドが取り付けてありますが、キャストの際にはベイトタックルの場合は基本的にリールが横を向いた状態になり、スピニングよりもブランクに対してねじれる負荷が掛かりやすいと言えます。

ベイトロッドでも海釣りの重いオモリを使用した胴付き仕掛けに使う竿はアタリを待つ間も魚が掛かった後もずっと負荷が掛かっていてリールも上向きのままですので絶えずブランクにねじれの負荷が掛かっており、この負荷を軽減するためにスパイラルガイド設定の竿がありますが、これに関してはガイドを傾斜させる向きが右であっても左であってもさしたる影響はないものです。

一方キャスティングゲームとなると話は変わってきて、右投げの人はブランクに対して右方向にねじれる負荷が掛かり、左投げの場合は左方向にねじれる負荷が掛かる(投げ方の癖によりますが概ね)
3ピース以上のマルチピースベイトロッドでキャストを繰り返しているといつの間にかジョイント部分が右か左に回っている人はそういう理由です。

以前は2ピースが主体でありましたトラウトロッドも近年マルチピース傾向が強く大勢を占めるようになりましたが、ジョイント部分が回るといった経験がないという人は、軽量なルアーで沢筋で近距離キャストが主体のため、あまり負荷が掛かっていない場合や、柔らかいグラスロッドを使っている場合はブランク自体がわずかな負荷でねじれるためにジョイント部分に力が伝わりにくいという事が考えられます。
特に縦向きの単一方向に繊維が入っているUDブランクは横方向にねじれやすい(横方向繊維の薄いグラスシートで補強しないと強度が得られない為、厳密には縦向き繊維の単一方向ではないのですが)
よって、柔らかなグラスロッドのシリーズ、WESSEX Delightfulシリーズもスパイラルガイドモデルは作っていません。

また、ねじれの負荷が掛かる方向ですがバックハンドやフリップキャストはオーバーやサイド、サークルキャスト等とは異なり右手なら左方向へのねじれ、左手なら右方向となり逆手となるのですが、パワーキャスト・高負荷という観点からは少し外れるため、今論点からは省かせていただきました。

一方、ある程度ウェイトがあり大き目のルアーをトラウトベイトロッドのストロングスタイルで楽しむ、飛行機内持ち込み荷物に入れるマルチピースロッドとなるとスパイラルガイドセッティングのベイトロッドは捨てがたい要素であると私は考えています。
7フィート前後のストロングスタイルベイトロッドもテスト中ですが、やはりスパイラルガイドについては使う人によって右傾斜が適しているか左傾斜が適しているか違いますのでノーマルガイドバージョンとは別に、スパイラルセッティング希望のお客様分はオーダーメイド扱いにさせていただこうかと検討しているところです。

次回はロッドのテストをする人についてお話しする予定です。
お時間がありましたらお立ち寄りください。